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インタビュー 工芸を動かす人 File#002 スティーブエン・バイメル

オープニング国際フォーラム「工芸と世界」のSpeaker[Webinar 2022/9/18]

スティーブエン・バイメル
Steve Beimel

JapanCraft21代表

日本工芸週間オープニング国際フォーラムにてご登場いただくスティーブエン・バイメルさんは、日本の伝統工芸を再生するためのボランティア団体 JapanCraft21の主宰者として、新しい工芸の循環系を作る人たちを応援する仕組みをつくっています。
今日は、日本の人が気づいていないかもしれない、工芸の魅力について伺います。

──バイメルさんは、日本の工芸の魅力をどういったところに感じておられますか?

日本のものづくりを学ぶ方法は、とても独特で面白いと思います。いわゆる徒弟制度ですが、そこでの学びは面倒で時間が掛かるけれども、最終的にはすばらしく高い技術を身につけることができる。何度も何度も失敗を繰り返す試行錯誤の末に得た技術の幅は、とても広いと思います。はじめからただ正解を教えられると、決まったものしかつくれません。
日本の教え方のすごさはそこにあると思うのですが、最近ではそこまで贅沢できなくなってきたようにも感じられますね。

──工芸について、日本に暮らす人たちが認識すべきことはどのようなところにあるでしょうか。

日本の工芸は世界中の宝ものなのに、日本の人は身近に見慣れすぎて気付いていないでしょう。外国に行ったときにはじめてその素晴らしさに気付きます。自分たちがすばらしい宝ものを手にしていたのだということに。そしてその重要性に。
その宝ものが刻々と消えつつあるという現在の状況は、世界にとっての損失です。イタリア、ドイツ、イギリスも同様で、既にかなりの宝ものが消失しました。この状況に対して手をこまねいていることに、私はほとんど怒りを覚えます。

バイメルさんのいままで
1970年代に初めて来日した時から日本の手仕事、工芸文化に魅了され、1990年代に工芸の工房への訪問、工芸家や職人との出会いや対話などに重点を置いたツアー会社を立ち上げました。独自の視点で企画したツアーを主に米国からの旅行者に提供し、彼らの多くは日本文化のファンになっています。しかし、このままでは日本の工芸が絶滅してしまう、という危惧を抱いて、日本の伝統工芸を再生するための団体 JapanCraft21 を創設。海外の支援者たちを集め、新しい工芸の循環系を作る人たちをサポートしています。

──JapanCraft21を始めた経緯をお伺いできますか?

アメリカ人の友人同士10人でお金を出し合って、2年くらいの間さまざまなことにトライしてきました。例えば杉で網代を編むへぎ板の職人に話を聞きにいくと「もう間もなくこの素材は消えてしまう」というのでサポートしようと思うわけです。ところがまた別のジャンルでも、そのまた別のジャンルでも同じ話を聞く。そこで、消えゆきつつある工芸を見つけて、工芸士と弟子の両方をサポートするシステムを考えることからスタートしましたが、複雑な問題も多く…それらを解決する効果的な手段として、最終的にコンテストという方法にたどり着いたのです。

──コンテストという形を取りますと、それが続く限りサポートは終わらないということですよね。とても大変なことだと思うのですが、コンテストによる工芸のサポートに関して、どのようなビジョンを描いておられますか?

普通のコンテストは授賞式で終わりますけれども、我々の場合は授賞式の翌日からスタートします。現段階では、毎年10人を選んでサポートしていますが、今後はお互いがサポートし合えるような形になればと考えています。それはすごいパワーになると思うのです。誰かがなんらかのメディアに紹介されたら、その人がまたメディアに仲間を紹介していくようなことで工芸の世界を盛り上げたり、異ジャンル同士のコラボレーションでお互いの技術を学びあって世界を拡げていけたらいいのではないでしょうか。交流によってお互いに助け合うのです。

私たちは資金も人材も潤沢ではありませんから、まず、小さくてもいいからできることをひとつする。それを一生懸命やるのです。小さな問題をひとつ見つけたら、それを解決していくことです。

[「watoji」編集部]


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