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インタビュー 工芸を動かす人 File#001 丸岡直樹さん

オープニング国際フォーラム「超!工芸」のSpeaker [Webinar 2022/9/18]

丸岡直樹
まるおか・なおき

文化庁 参事官(文化観光)付 文化観光推進コーディネーター
(バリューマネジメント株式会社 社長室 ゼネラルマネージャー)

日本工芸週間オープニング国際フォーラムにてご登場いただく丸岡直樹さんは、工芸のみならず「文化観光」を前進させるキーパーソンです。日本各地に足を運び、文化と観光の良好な関係づくりを日々進めています。今、どんなことを感じているのか、お話を伺いました。

──文化庁が、画期的な取り組みをはじめています。今度の日本工芸週間オープニング国際フォーラム「超!工芸」で、3分間ライトニングトークにてお話しいただきますが、この文化観光推進チームはどういういきさつで生まれたのでしょう? とても風通しのいいチームですね。

褒めてくださってありがとうございます。文化庁自体が、いま変わってきているところもあると思っています。

2018年以降、文化芸術基本法が改正、次いで文化財保護法が改正され、2020年には文化観光推進法が制定されました。私たちが携わっている「文化観光推進事業」は観光庁と組んで推進しているプロジェクトなので、外からの風が入ってきます。「いい事業をつくっていきたい」という空気感です。

これまでももちろん、文化庁は文化財の保存と活用に取り組んできましたが、壊れゆくものをどう守るかということでいっぱいいっぱいだった面もあって、難しいことも多くありました。税金だけで全てを支えきることはできませんし、リアルタイムで生まれてくる文化の文化的価値を、今すぐ明確に認定するのは難しい面があったりもします。
ですので「活かして」いくことで「保存」ができ、「保存」ができることで、より新しい文化の「苗床」になれる、そしてさらに活用が進んでいく。そうした「いい循環」をつくっていきたいと考えるようになってきました。

今は、月の半分くらいは地方に出張に行っています。やはり地域と直接対話していくことが大切です。リアルに何が起きているのかを知らないと支援のしようがなかったりしますし、直接顔の見える関係で対話することの意義は大きいと思います。今までのような、公平性のために誰とも話せないという感じではなくて、「観光側と文化側とをつなぐ役割」が私たちの仕事ですから、各地で観光側と文化側双方に会ってつないだりしています。工芸、アート、さまざまな領域の方々とお話ししていますね。

 

丸岡さんのいままで
東京大学に在籍していた20歳から22歳の間に、NPOカタリバで多数の高校生と語り合ってきました。歴史的建造物の利活用・観光まちづくりに取り組むベンチャー企業「バリューマネジメント株式会社」に新卒で入社。地方に常駐し現場責任者を経て、マーケティング責任者として行った取組が評価され、観光庁に出向しました。観光庁のつながりのなかで文化庁にもご縁があり、2021年から文化庁の文化観光推進コーディネーターとして「文化観光」に取り組んでいます。

──訪れる側、受け入れる側双方が幸せな「文化観光」に必要な要素について、各界のプロフェッショナルが必要とおっしゃっていましたが、そのあたりのお考えを教えてください。

まず文化側では、最初に「ほんものの人」がいないと始まりませんよね。空っぽのものに装飾をして無理矢理売りつけることはしたくありませんから。一方で、「ほんものの人」は、常に「ほんもの」をつくるために努力されていて、人とのコミュニケーションといった接続部分にはリソースを割いていません。ですからそういったマーケットとの接続、担い手ではない方々との繋がりをつくるには、フォローが必要だと思っています。

やはりそこに、人をつなぐ役割を受け持つプロが必要となってきます。そのつなぎ手に、世の中に広げたり、ビジネスに長けたプロが組みあわさる、「つくり手」「つなぎ手」「ビジネス」、骨になる3つのプロフェッショナルが揃うと、コンパクトに動きやすくなります。この組み合わせに、地域の方が関わっていったりして肉付けされていく、そういったイメージをしています。

──ゴールを見据えた時、課題としてどのようなことが浮かんできますか?

いくつかあるのですが、つなぐ側と言いますか、どちらかというと僕は中間に位置して見ていると、双方の今までの確執のようなものは結構あるように感じています。
そこに対して、門戸を開いてくださる方、並走くださる方を大事にしたいな、と思っています。

一旦理解が得られて信頼していただいても、最後に期待を裏切ったりすることにならないとも限りません。ていねいに並走していく必要があります。ビジネスはビジネス、文化は文化で、放っておいたらどこかで相互の目標設定にズレが出てきますから。工芸は「使う」という目的が、つくり手と使い手で互いにイメージしやすいので、アートや他の分野に比べて、仕組みがつくりやすいはずですね。ていねいに築いてゆけば、よい(文化と観光の)モデルケースを構築できると考えています。

また、文化を担う人たちにきちんとお金が還元されていくモデルを、意識してつくっていくことが重要だと思います。顧客を持っている側が強くなりすぎて、文化側が安売りをしなければならないようなことになって、すり減ったり、損なわれたりすることのないようにしていきたいと思っています。

[「watoji」編集部]


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