Interview

「うるしのいっぽ・漆精製の視点から」

堤卓也(株式会社堤淺吉漆店 専務取締役)

今回の展示を通じて、みなさんにどのようなことを知っていただきたいですか。

まず、漆の現状を知っていただきたいです。国内で流通している漆の97~98%が中国産を中心とする外国産で、国産は2~3%しかありません。

また、漆の使われ方は、世のなかの人の価値観や生活様式が変わるなかで漆を使う場面がどんどん減っていますが、その価値観を変えたいという想いがあります。そのなかで何ができるかと考えたときに、大きいことはできませんが、地道なことだけど、漆を知ってもらうことが、人の価値観を変えたり、漆の状況を知ってもらうことにつながりますし、また、さまざまな分野の方からアイデアが出てきたらいいなと思いまして、それで「うるしのいっぽ」という冊子をつくっています。

「うるしのいっぽ」では、漆の価値観を伝えたいですし、自分が漆の精製をやっているので、精製をするなかで自分自身が面白いと思っている漆のことも伝えたり、精製業は漆を掻く人と漆職人さんの間にいるので、漆を掻いている人が知っている漆の面白さを伝えたり、職人さんがやっている漆の面白いことなども伝えられたらいいなと思ってやっています。

「うるしのいっぽ」をつくって、その先というのは、98対2という輸入漆が多い現状を少しでも国産漆の量を増やしていくことで、将来的に漆の文化が残ることにつなげたいと考えています。漆の現状の危機もお伝えすることで、漆を使うことが、いまの日本の漆の文化を守ることにつながるということも、一般の消費者の方にもわかってもらえたらと思っています。

こういった活動をはばむものは何ですか?

はばむものは、漆の生産体制の難しさが一番にあると思います。植える場所の確保も難しいですし、誰が育てて、誰が掻くのか、漆を採ることができない10年〜15年の間をどう補っていくのかといったことです。

もし、漆に興味をもった若い人が「漆って、すごく素敵だね。農業のかたわらでやろうか」と思っても、農地法の関係があり、農地でウルシの木を育てることができないという話も聞きました。そこにも働きかけがあって、解決しようとしているのです。ウルシの木は育てるだけで、10年〜15年かかるので、地道ですが生産量を増やすための活動を早くやっていきたいなと思っています。漆は自分を育ててもらったものでもあるので、なんとかできればと感じています。

今後の展開をどのようにお考えですか?

いまの地道な活動を通じて、どんどん人と繋がって、漆のことを知ってもらうことで世のなかの価値観が少しでも変わっていくとうれしいです。漆にはまった人は本当に漆好きな方が多くて、漆関係の集まりに行くと、自分の身を削ってウルシの木を育てたり、増やす活動をしている方が多くおられます。漆にはそこまで人を惹きつける要素があって、これがわずかでもまだ漆の魅力を知らない方に広めることができれば、少しでも漆の需要が増えると思います。

あとは、漆を産業として残していくために国産漆の生産量を増やしたいです。自分ひとりにとてもできることではないですが、現在の国産漆の流通比が98対2から90対10へ、これでもとても大変な量ですが、いろいろな方の知恵やお力をいただいて具体的な活動や確実にできる方法を見つけたいと思っています。これは本当にいま必要なことだと思っています。

2016年12月13日、絶滅危惧の素材と道具「NEXT100年」にて。

うるしのいっぽ https://www.urushinoippo.com/

文:いしまるあきこ
写真:大隅圭介

絶滅危惧の素材と道具 NEXT100年 プレゼンテーション#08 堤 卓也