今回の展示を通じて、みなさんにどのようなことを知っていただきたいですか。
伝えたいことはたくさんあるのですが、どちらかというと、たくさんいらっしゃる同じ職人さんや他の道具屋さん、材料屋さん、そういった方達にメッセージを伝えたいと思っています。
やはり僕たちの世代、若い世代になってから、僕たちが伝統を受け継ぎつつも、僕たちが新しい時代をつくっていかなくてはいけないということを、その覚悟をもつ必要があるなということです。みんなでその覚悟をもって伝えたいです。そこを分かち合えたらいいなと思っています。
「NEXT100年」というテーマで集まった方たちでしたから、自分が伝えるだけではなく、逆に刺激を受けたので、すごく有意義で良かったと思いました。
この活動をはばむものは何でしょうか
現実というか、状況がそれを許さないということがあると思うのですね。たとえば、伝統工芸のどの分野がというわけではないですが、お金の面で厳しかったり、材料が手に入らないとか、他にもいろいろな事情があると思います。そういう現実を、気力だけで跳ね返すのはなかなか難しいところもあると思うのです。そこをなんとかできるようにしたいですし、僕がそういうところにも関われたらなと思っています。
今後はどのような展開をお考えですか
まず、僕自身が漆刷毛師の十代目として本格的に修行をしっかりとして、自分の腕を磨くというのはもちろんですし、一生修行の覚悟はあります。
漆刷毛師としてではなく、日本の伝統工芸そのものをなんとかしたいという想いがあって、それが僕だったらできるのではないかと思っているし、僕にしかできないことだと思っています。漆刷毛そのものだけではなく日本の伝統工芸の未来を僕自身でつくって、僕自身で変えていきたいなと思っています。それを具体的にやっていきたいと思いますね。
2016年12月13日、絶滅危惧の素材と道具「NEXT100年」にて。
文:いしまるあきこ
写真:大隅圭介