女子美術大学は、2016年の21世紀鷹峯フォーラムの開催において、全面的なサポートを行い、東京実行委員会での中核的な役割を担っています
同時に「創る、伝える、繋がる」女子美術大学デザイン・工芸学科 工芸専攻教員作品展はじめ、多くの展覧会やイベントを開催。「つくり手」と「つかい手」を積極的につなぐ場を提供しています。
織、染、刺繍について、デザイン・工芸学科で教鞭をとる、3名の先生方にお話を伺いました。
工芸の魅力とは、どのようなものだと思われますか。
渡邊:手のなかで素材が変化していくことが、手でつくることの醍醐味だと思います。私は織物を専門としていますが、手を動かしながら偶然発見したことから、さらに想像を膨らませて、自分のスタイルを築いていけるところが、デザインとは違う点だと思います。デザインでは、設計に力を注ぎ、発注し、そのプロジェクトには、エンジニアや職人さんなどの複数の人びとが関わります。工芸は、最初から最後まで自らの手で制作し、考えを作品に込めながら、自分だけが可能な微調整を加え、時折、想定を超えることもあったり、結論は最後の瞬間までわからない。そこにつくり手としての魅力を感じます。
日本の工芸の特徴について、思うところを教えてください。
渡邊:日本では、手仕事をとおして、素材に対しての繊細な意識、触覚が培われてきました。たとえば紙ですと、素材感、薄さや風合いにも敏感になりますから、日本にはいろいろな紙質があります。素材を料理することにも長けていますね。外国から入ってきたものも、日本風にアレンジしてレベルを高めていくし、伝統あるものも新しいものに生まれ変わらせる力があります。その独創性も、日本の工芸の特徴だと思います。
工芸の新しさについて、どのようにお考えでしょうか。
荒:私は染色を学び、学生さんたちと一緒に日々切磋しているのですが、歴史ある豊かな染織文化に、日々後押しされているという意識が強いです。自然を素材に、新しい制作を積み重ねていくと、自ずとアイデンティティーが芽生え、制作が面白くなっていきます。手でものをつくっていくときに、歴史に支えてもらいながら、新しい創造ができる、そこに新しさと魅力を感じます。
いまの工芸の課題について、どのようにお考えでしょうか。
大﨑:私は学校で刺繍を教えていますが、工芸という技術があるにもかかわらず、その技術で暮らしていくのが厳しい状況にあります。システムが構築できればいいのか、作品に魅力を出せばいいのか、アピール不足なのか、他にできることはあるのか……。考えなければならない課題がたくさんあります。21世紀鷹峯フォーラムを通して、日本の工芸のよさを、国内のみならず、海外の方々にも発見していただき、工芸を見直すよいきっかけになれば、と思います。
2016年10月22日、21世紀鷹峯フォーラム in 東京「日本工芸Opening Conversation」にて。
2016年11月10日(木)~13日(日)、虎ノ門ヒルズ アトリウムにて、A hundred threadsの展覧会が開かれます。
A hundred threads
2016年11月19日(土)、女子美術大学(杉並キャンパス)にて、伝統工芸 こどもワークショップが開かれます。
伝統工芸 こどもワークショップ
2016年12月7日(水)~12月21日(水)、女子美術大学アートミュージアム(相模原キャンパス)にて、創る、伝える、繫がる 女子美術大学デザイン・工芸学科工芸専攻教員作品展が開かれます。
創る、伝える、繫がる 女子美術大学デザイン・工芸学科工芸専攻教員作品展
2017年1月13日(金)~15日(日)、渋谷ヒカリエ 8/COURTにて、えどがわ伝統工芸 ┼ 女子美術大学―伝統工芸者と女子美生のコラボレーション作品展―が開かれます。
えどがわ伝統工芸 × 女子美術大学 ―伝統工芸者と女子美生のコラボレーション作品展―
2017年1月20日(金)~22日(日)(テキスタイルコース)、1月24日(火)~26日(木)(陶・ガラスコース)、スパイラルガーデンにて、「想像┼創造」─116年の伝統と躍動する工芸女子─女子美術大学デザイン・工芸学科工芸専攻卒業・修了制作展が開かれます。
「想像×創造」—116年の伝統と躍動する工芸女子—女子美術大学デザイン・工芸学科工芸専攻卒業・修了制作展
文:永峰美佳
写真:蔵プロダクション http://zohpro.com/