杉本晃則(漆芸家)インタビュー

「つくるフォーラム」とは、使う目的を明らかにしたさまざまな「つくる」公募を行うことで、ものづくりの活性化を促す、21世紀的・つくり手支援のかたちです。一般社団法人ザ・クリエイション・オブ・ジャパンが主催しています。
「つくるフォーラム」を通じて公募された、「島津製作所 勤続25年表彰記念品」の採用作品に選出され、330個の表彰記念品「漆螺鈿グラス紅白梅」を制作された漆芸家の杉本さんにお話しを伺いました。

sugimoto_01「つくるフォーラム」に応募する際に注意したことは何でしょうか。

一番はコストの面ですね。さらに、330個の表彰記念品を1ヶ月半の期間でどのようにつくるかという面で、適正なものを考えてつくらせていただいたのが、一番注意したことですね。漆の場合、ひとつひとつ手作りのものですから、どうしてもコストが高くなりますので、それをどうやって解決するかを注意しました。

330個の商品を1ヶ月半でどのようにつくったのですか?

今回、グラスを使わせていただいたのですが、普段取引していなかったところとたまたまつながれて、数も確保できましたし、いいことが続きました。一か八かで応募したので、期間とコストと数の条件はもちろん考えてはいましたけれども、採用された時は、一瞬、どうしようかと思いましたね。

2016年度島津製作所勤続25年記念表彰品。表望堂・杉本晃則「漆螺鈿グラス紅白梅」。撮影=多田雅輝
2016年度島津製作所勤続25年記念表彰品。表望堂・杉本晃則「漆螺鈿グラス紅白梅」。撮影=多田雅輝

「つくるフォーラム」と一般的な公募との違いは何でしょうか?

一番の違いは、自己満足ではなく、人が欲しいと思うものをつくらせていただく公募というところですね。一般的な公募の場合は、アーティストの審査員といったプロの方が審査するわけですけれども、今回の表彰記念品の公募は、島津製作所の社員の方に審査していただきました。一般の方が求められているものをつくることが、普通の公募展との違いですね。

本来はそうではないといけないと思います。人が欲しいと思うものをつくることが、需要につながるわけですから。自己満足も大事ですけれども、人が欲しがるものをつくることが、工芸が残っていく、ひとつの大きな筋道になると思います。

今回、「つくるフォーラム」に関わられてプラスになったことは何でしょうか。

普段は、一点、一点のものをつくっているのですが、試行錯誤しながら、量産することを乗り越えられたことで、その体制作りができたことですね。こういう機会がなければできなかったので、ありがたかったなと思います。今後、またこういう機会があれば、そのシステムを使えるので、強みになりました。

2016年10月22日、21世紀鷹峯フォーラム in 東京「日本工芸Opening Conversation」にて。

2017年1月23日(月) 13時から、国立新美術館の講堂にて「つくるフォーラム」公募説明会が行われます。
公募予定の企業には、アクアイグニス、「京博ブランド」第二次募集(京都国立博物館のオリジナルブランド)、島津製作所、ナカダイ、ほかが名を連ねています。
つくるフォーラム 公募説明会 @ 国立新美術館・講堂

文 :いしまるあきこ http://ishimaruakiko.com
写真:蔵プロダクション http://zohpro.com/