横山勝樹先生(女子美術大学 学長)インタビュー

女子美術大学は、2016年の21世紀鷹峯フォーラムの開催において、全面的なサポートを行い、東京実行委員会での中核的な役割を担っています。
同時に「創る、伝える、繋がる」女子美術大学デザイン・工芸学科 工芸専攻教員作品展はじめ、多くの展覧会やイベントを開催。「つくり手」と「つかい手」を積極的につなぐ場を提供しています。
学長である横山勝樹先生に、お話を伺いました。

工芸の魅力とは、どのようなものだと思われますか。

工芸の魅力は「手でつくる」ということに尽きると思います。「つくり手」の手でつくったものを、「つかい手」の手でもつ。そこに手の温かみを感じる。そのつながりを大切にしたいと思います。

yokoyama_02いまの工芸の課題について、どのようにお考えでしょうか。

よい素材をつかい、手間と時間をかけてつくられたものは、どうしても価格が高くなります。特に若い人には、それが「高いもの」であるという意識が植えつけられています。

何に対して「高い」という判断が生まれるのか。生活のなかで使われるものは、長く使い続けられることが大切です。一代にとどまらず、二代、三代と引き継いでゆける工芸品がたくさんある。そういった価値観が世の中にあることに、まず気づくことが大切だと思います。

若い世代の意識の変化が、工芸の普及ともつながりそうですね。

現代のタイムスパンで見れば、「ワンシーズン」という刻み方がありますね。その短い賞味期限に対して、自分が一生つかう、あるいは子や孫の世代まで引き継げるものがある。その豊かな時間の流れは、お金には換えられないものです。

私も実際、祖父の代から引き継いできた文机を、息子にも使わせています。「100年後の工芸のために」というテーマから考えると、世代と世代がつながっていかなければ、100年という時間を紡ぐことはできないでしょう。

21世紀鷹峯フォーラムに期待することは、どのようなことですか。

女子美術大学という教育機関として大切に思っていることは、いまの学生は、仮に工芸を専攻していても、伝統工芸とつながっているという意識、時間的な連続性が希薄です。

未来につながるためには、いまの美術があり、それと同時に、自分自身が伝統ともつながっていることを意識してほしい。長い時間のなかで未来について考えるきっかけを、この21世紀鷹峯フォーラムの場が与えてくれることを願っています。

2016年10月22日、21世紀鷹峯フォーラム in 東京「日本工芸Opening Conversation」にて。

2016年11月10日(木)~13日(日)、虎ノ門ヒルズ アトリウムにて、A hundred threadsの展覧会が開かれます。
A hundred threads

2016年11月19日(土)、女子美術大学(杉並キャンパス)にて、伝統工芸 こどもワークショップが開かれます。
伝統工芸 こどもワークショップ

2016年12月7日(水)~12月21日(水)、女子美術大学アートミュージアム(相模原キャンパス)にて、創る、伝える、繫がる 女子美術大学デザイン・工芸学科工芸専攻教員作品展が開かれます。
創る、伝える、繫がる 女子美術大学デザイン・工芸学科工芸専攻教員作品展

2017年1月13日(金)~15日(日)、渋谷ヒカリエ 8/COURTにて、えどがわ伝統工芸 ┼ 女子美術大学―伝統工芸者と女子美生のコラボレーション作品展―が開かれます。
えどがわ伝統工芸 × 女子美術大学 ―伝統工芸者と女子美生のコラボレーション作品展―

2017年1月20日(金)~22日(日)(テキスタイルコース)、1月24日(火)~26日(木)(陶・ガラスコース)、スパイラルガーデンにて、「想像┼創造」─116年の伝統と躍動する工芸女子─女子美術大学デザイン・工芸学科工芸専攻卒業・修了制作展が開かれます。
「想像×創造」—116年の伝統と躍動する工芸女子—女子美術大学デザイン・工芸学科工芸専攻卒業・修了制作展

文:永峰美佳
写真:蔵プロダクション http://zohpro.com/