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展覧会・イベント、見てある記 #09

パネル展示「文化財建造物に使用された金箔に関する保存修復科学的な調査研究」

2017年10月20日(金)〜 11月26日(日) @ 金沢市立安江金箔工芸館 1階多目的ホール

1階の多目的展示ホールで行われているパネル展は入場無料。
古文書やX線調査から、使われていた金箔の種類や組成が究明されました。
ベンガラ箔下と黒箔下、顔料に加えた膠と唐油の違いなどが比較できる彩色手板。
日光東照宮に残る年代の異なる金箔の断片。
日光東照宮の陽明門の修復過程を紹介する映像も見応えがあります。

「金沢市立安江金箔工芸館」は、日本の金箔の99%を生産する金沢に立地する、世界で唯一の金箔専門の美術館です。金箔の製造工程や道具類、金箔を用いた美術工芸品を展示するとともに、併設の「金沢箔技術振興研究所」では箔の物性研究や歴史調査なども行われています。

これまで日本では、文化財建造物に使われた金箔の組成や使用方法について詳しく研究されたことはありませんでした。それを試みたのが、本展で紹介されている調査研究です。「金沢箔技術振興研究所」の委託研究として龍谷大学の北野信彦教授によって行われ、まず平等院鳳凰堂、中尊寺金色堂、二条城、西本願寺など、日本全国の国宝・重要文化財建造物における金箔の使用についての悉皆調査(しっかいちょうさ)が実施されました。そして、現在も平成の大修理が進められている日光東照宮をケーススタディとして、江戸中期の修理を記録した古文書を解読し、使われた金の質や量などを割り出して、同じ組成の金箔の復元・作成が試みられました。日本の歴史的建造物の中でも特に大量の金箔が使われている日光東照宮は、過去に何度も修復が行われていますが、その時の貴重な記録が残されており、今回の研究にも重要な役割を果たしました。

展示会場には一連の研究内容を解説したパネルの他にも、当時の金箔を再現するために用いられた江戸時代の一分金(金貨)や、東照宮に残る年代の異なる金箔の断片なども展示されています。特に目を引くのは木彫極彩色の漆箔の再現のために作られた彩色手板です。復元金箔と現代の金箔、下地の色、顔料に混ぜる油の違い別に手板が作られ、色味の差をつぶさに比較できます。また、ぜひ見ておきたいのが陽明門の修復過程が紹介されたVTRです。保存修復の様子がわかりやすく紹介され、展示内容の理解が深まります。

展覧会、および資料館の情報は
→ 21世紀鷹峯フォーラム 情報ページ

取材日2017年11月6日