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「工芸と観光」展望と課題 シンポジウム

Day1「工芸と観光」展望と課題シンポジウム
日本全国の工芸に触れる体験を提供する方の‘点’をつなぎ、
日本の観光力にダイナミックな展開を

2017年11月24日(金)10:30〜11:45 @ 石川県立美術館

全体会議1
工芸と観光、新たな市場へ向かうマインドセッティング

オープンファクトリーやクラフトツーリズムなど、日本のものづくりの力を観光の力に変える取り組みが増えてきました。観光のひとつのアイテムとしての工芸ではなく、工芸によって観光の力を生み出していくためには、どうすればいいのか。この分野に取り組んでいる方々にお越しいただき、さまざまな意見交換を行いました。

【登壇者】
●ハンスピーター・カペラー[ブランディング・コンサルタント]
●山田立[株式会社玉川堂 番頭/第5回 燕三条工場の祭典副実行委員長]
●長田将吾[観光庁 観光地域振興部 観光地域振興課 主査]

【モデレーター】
●山田浩[一般社団法人ザ・クリエイション・オブ・ジャパン(CoJ) クリエイティブ・ディレクター]

→イベント詳細http://takagamine.jp/event/5962

2017年で5回目を迎えたオープンファクトリーのイベント「燕三条 工場の祭典」。
このイベントでは、4日間の会期で5万3千人を超える来場者を動員しました。その取り組みについて、副実行委員長である山田立氏が解説しました。
→「燕三条 工場の祭典」 

燕市、三条市の行政、そして産業の中心となっている金属加工工場だけでなく、関連の工場、食品工場、農家などを巻き込んだことを山田氏は説明しました。トークショーや工場ライブ、作業着のファッションショー、さらに職人の説明とともに製造工程を見てもらう工夫をしたと言います。このイベントでの売上金額は、初年度380万円から2017年は3800万円へと10倍に増加。有田や鯖江など全国11の産地間の交流を広げる新しい取り組みも始めていると山田氏は報告しました。

また、山田氏はこのイベントでのメリットを3つ取り上げました。常時見学可能な工場が毎年増えていること。若者の就職希望者の増加したこと。現場を見たことで、価格に納得感を持ってもらえたことです。

そして、ブランディング・コンサルタントのハンスピーター・カペラ―氏は、「現地に行くことで、特別な体験ができる。作品のストーリーが味わえることで、思わず買ってしまう」と語り、品物だけを売るのではなく、商品の背景づくりの大切さを述べました。

観光庁の長田将吾主査は、「DMO」を解説。これからの観光産業を、自動車を超える基幹産業にしていくという国の目標を提示。「ブランディングやプロモーションの手法をしっかりと導入していくことが必要」と述べ、DMOを中心としたさまざまな地域振興のための施策に国が支援していくことを述べました。

一方、観光客が急増することへの問題も語られました。カペラー氏は観光客が急増した際の問題として、「公共設備が整っていないと、観光客を受け入れるためのコストがふくらんでパンクしてしまう」ことを指摘。山田氏もレンタカー以外の2次交通、宿泊、食事の面が重要な課題だと語りました。しかし、無理をしない範囲で、「ソーシャル・ネットワーキング・サービスだけの情報で集客するなど、まずやってみるべき」と山田氏は述べ、地域での観光の取り組みの大切さを強調しました。