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展覧会・イベント、見てある記 #17

第64回「日本伝統工芸展金沢展」

2017年10月27日(金)〜11月5日(日) @ 石川県立美術館 

大作が並ぶ陶芸部門の展示
美しい色彩と意匠に目をうばわれる染織の展示
緻密な細工の数々に息を飲む漆芸・金工の展示

「日本伝統工芸展」は、優れた伝統技術の保護と後継者の育成、伝統工芸に対する普及を目的として昭和29年(1954年)に始まり、公募展として開催されてきました。

金沢展は、石川県立美術館の前身が開館した昭和34年(1959年)からの歴史があります。また、金沢市出身の漆芸家・松田権六氏(文化勲章受章者・蒔絵人間国宝)が牽引して始まった展覧会でもあることから、全国数カ所を巡回するなかでも金沢は特別な位置づけで、毎年11月3日の文化の日を含むこの時期に開催されることが恒例になっています。

今回の金沢展では陶芸・染織・漆芸・金工・木竹工・人形・諸工芸の7部門の入選作品621点の内から、石川県内在住の人間国宝8氏をはじめ、受賞者等の秀作、北陸の作家を中心とした入選作品など348点が展示されました。新鋭からベテラン作家まで、全国から選りすぐられた作品が卓越した技と美を競い、来場者を引きつけていました。なかでも北陸の作家の入選作は6割を占め、石川県からは67人の入選作が並べられていました。石川県の入選作の多さは都道府県別でも毎年群を抜いていおり、工芸王国・石川で研鑽を重ねる作家たちの技術の高さや、層の厚さがうかがえます。

「日本伝統工芸展」は「用の美」を追求する傾向があり、伝統工芸といっても単に過去の作品の模写ではなく、受け継いできた技術で新たな表現を試みながらも決して機を衒わない、暮らしの空間に溶け込む「用の美」が感じられました。現代の生活に即した、新しい伝統工芸の姿を見ることができました。

展覧会、および資料館の情報は
→ 21世紀鷹峯フォーラム 情報ページ

取材日2017年11月5日