金沢21世紀工芸祭 趣膳食彩 共鳴する才能 〜光悦と金沢〜
2017年11月4日(土)16:30〜 @ 経王寺
料理人と工芸作家という、「つくる」を生業とする人が、真摯に向き合い語り合い、思いを宴に昇華する。「趣膳食彩」はそんなコンセプトで、町家や茶屋建築などの趣ある空間で、日時や趣向を変えて開催された食と工芸を五感で味わうイベントです。
この日訪れたのは「趣膳食彩・共鳴する才能 〜光悦と金沢〜」。会場となった金沢・小立野にある「壽福山 経王寺」は、加賀藩3代藩主の前田利常公の生母・寿福院が開基の日蓮宗寺院で、金沢の本阿弥光悦家の菩提寺でもあります。参加者は食事会の前にお墓に手を合わせ、座学で光悦と金沢の関係について学びました。また、東京から本阿弥光悦家・当代の名代として江守洋一さん(光悦家15代の孫)をスペシャルゲストに迎え、経王寺ご住職や郷土史家、歴史研究家などを交えた座談会も行われました。「書・陶芸・作庭など多方面で活躍したマルチアーティスト・本阿弥光悦が、これほど金沢にゆかりが深いとは思わなかった」、「俵屋宗達のお墓が市内の宝円寺にあるのは知っていましたが、本阿弥光悦の子孫のお墓も近くにあったのですね」と、参加者それぞれに新たな発見があったようです。
座学の後は、いよいよ食と工芸の宴の始まり。食の時間も前半・後半で趣向が異なり、前半は和ろうそくの灯りだけで「たった今、今しかない」という武士の道にも通じる心境で、白いご飯・お味噌汁・お漬物を禅僧の作法で味わうというもの。光悦が生きた400年前と同じ灯りに浮かび上がるのは、刹那の美しさともいうべき幽玄さ。湯気や香り、給仕の人の衣摺れの音にまで、驚くほど五感が研ぎ澄まされていきます。
後半は明るい光の中で無礼講の宴。藩政期の茶懐石を再現した料理が、赤絵の九谷焼、越中瀬戸焼などに盛られて次々と運ばれてきます。床の間には酒井抱一の「月萩草」の画。お料理には銀の器に月に見立てたしんじょ「露中月光」。お土産には、新古今集にある萩と月を詠んだ句をご住職が揮毫された二俣和紙の扇など、美と食の粋なコラボレーションが随所にちりばめられ、参加者を楽しませていました。
展覧会、および資料館の情報は
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取材日2017年11月4日