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展覧会・イベント、見てある記 #06

高橋介州と加賀象嵌のあゆみ

2017年10月6日(金)〜 11月7日(火) @ 石川県立美術館

加賀象嵌の精緻な技とその魅力を伝える展示

加賀象嵌の始まりは、17世紀初頭に、武具などの補修のために職人が集められた御細工所(おさいくしょ)に遡ります。なかでも、象嵌を施した鐙(あぶみ)は名産品として全国に知られ、武家の間で高級贈答品としてもてはやされたということです。

ところが、明治維新を迎え、武家による需要が激減。輸出においても、世界恐慌や太平洋戦争にともなう資源制限で壊滅的な打撃を受けます。戦後、失われつつある加賀象嵌の継承に尽力したのが、高橋介州(たかはしかいしゅう)でした。

高橋介州は、戦中、県内の工芸保護に、戦後は、当時は石川県美術館館長などをつとめるなど、県内工芸界をリードし、昭和57年には石川県指定無形文化財「加賀象嵌」保持者に認定されます。代表作である《加賀象嵌孔雀香炉》は、尾羽の柔らかな曲線や羽毛に見立てた青海波と市松模様がモダンな感覚。また、《双魚》の鱗の斬新な表現など、数々の作品を見ていくと、「端正かつ精緻な仕上げと、無駄のない洗練されたデザイン」という高橋作品への評価を実感しました。

本展では、高橋の作品20点と、高橋に師事した中川衛(なかがわまもる)をはじめ、県内で活躍する作家たちの作品も紹介されており、17世紀の鐙から時代や自己を投影した表現作品に至るまで、加賀象嵌の魅力を十二分に堪能できる展覧会となっています。

展覧会、および資料館の情報は
→ 21世紀鷹峯フォーラム 情報ページ

取材日2017年10月30日