「ドレスに負けない着物」
檀ふみ氏
檀さんが出品して下さると約束してくださったのは、イブニングドレスコードのパーティで着られたという、友禅の技を駆使した青のグラデーションの着物とプラチナ箔の白の帯でした。きっと、どんなドレスにも負けないくらいにお美しかったでしょう!
檀ふみ氏
女優
檀ふみさんは、北は北海道から南は沖縄まで手仕事の着物の染めや織りの工房を尋ねられ、2001年に『檀流きものみち』と2012 年に『檀流きもの巡礼』を上梓されている。彼女は、二冊目の本の題名にある「巡礼」という言葉について「巡礼とは、決して私のことを言っているのではない。くだんのテレビ番組と同じように、私はただ「(染め織りの)巡礼の道」の要所、要所を巡って、実際に足をマメだらけにして歩いている人にお話をうかがっただけ。「もっともっと美しいきものをつくりたい」「着る人に喜んでほしい」と、日々、知恵を絞り、工夫を凝らし、身を粉にして働いている人たちこそ「巡礼」だろうし。そうしたきものの仕事場こそが「聖地」であると思う」と、書かれている。謙虚で手仕事とそれを生業としている人々への愛情に満ちた言葉である。
自分で初めて着物を買われたのは、20歳の時、紅型のコバルトブルーの振袖で、檀さん自身も大事に着られて、姪御さんの成人式に檀さん自らが姪御さんに着付けをされたという。話される様々なエピソードのなかで、日常のなかでも着物を大切にされ、若い人にもその良さを伝えられている姿が伺えた。
最近は、ロングドレスのパーティで友禅のぼかし染めの技を使った着物を着ていかれたそうで、ロングドレスだと宝石で首回りなどを飾らないとさまにならないが、着物だとそれは必要なく、帯が宝石替わりになり、その友禅のお着物には、西陣織のプラチナ箔の帯を合されたとか。170㎝ある長身に色のグラディエ―ションの着物と白の帯を召された姿はさぞかし美しかっただろうとすぐにイメージできた。今回出品頂いたのはその着物と帯である。また檀家のお正月に毎年使われる杯も出品して頂いた。お爺様が揃えられた髙蒔絵の祝杯は三つ重ねのうち、一つが失われていたので、お父様(小説家檀一雄氏)が骨董店で見繕われたという。お爺様、お父様二代で揃えられた三つ重ね祝杯のうち一つだけ時代が異なるため意匠や技も異なり、祝杯を囲んで、檀家がお正月にどんな会話がされていたかを垣間見られるものである。