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シンポジウム「茶道から学ぶていねいな暮らし」

シンポジウム
「茶道から学ぶていねいな暮らし」

2017年10月12日(木) @ 金沢21世紀美術館 シアター21

21世紀鷹峯フォーラム石川・金沢で、2017年10月12日にシンポジウム「茶道から学ぶていねいな暮らし」が金沢市の金沢21世紀美術館 シアター21で開催されました。
3名の茶道家が、現代生活と工芸をテーマにして語ります。茶の精神を通じて、日常の中で工芸を活かし愛しむ技を磨き、工芸のある生活を身近に感じられるようなヒントをちりばめたシンポジウムです。
ゲストは3つの流派からお招きしました。地元・石川から茶道裏千家の大島宗翠氏、東京から大日本茶道学会の田中仙堂氏、茶道宗和流の宇田川宗光氏、そしてモデレーターには金沢21世紀美術館館長の島敦彦氏です。
はじめにゲストの3名の活動紹介、次に、金沢21世紀美術館の広場を舞台に行われた「工芸ピクニック」を起点にさまざまな議論がなされ、最後に事前に聴講者より集めたいくつかの質問に答える形で話が展開していきました。

【登壇者】
●大島宗翠[石川県茶道協会・代表幹事、今日庵(裏千家)]
●田中仙堂[公益財団法人三徳庵理事長、大日本茶道学会会長]
●宇田川宗光[茶道宗和流]

【進行】
●島敦彦(金沢21世紀美術館館長)

→イベント詳細 https://takagamine.jp/event/5891

「工芸ピクニック」から

21世紀鷹峯フォーラム石川・金沢のイベントの一環とし、当シンポジウム前日に開催されていた「工芸ピクニック」。まずはこのイベントを起点に話が展開しました。お気に入りの工芸品を持参し芝生の上でお茶やお酒を楽しむ「工芸ピクニック」では、9つの「心得」を作成。この心得を事務局が紹介したのち、そのうちのいくつかについて茶道とのつながりやゲストの経験談などが話されました。

「ピクニックに事件はつきものである」という心得に対しては、大島氏からある逸話が紹介されました。茶会で茶碗を割ってしまった客に対して亭主が「またこの茶碗が割れてしまったのか」と、フォローしたという逸話です。

これに対して田中氏は松平不昧の「客の粗相は亭主の粗相」という言葉を引用し「お茶の世界には、客に粗相を感じさせていはいけないという心得が伝えられているのかもしれない」と話しました。

また「持ち物は、飛びっきりのお気に入り」という心得では、大島氏は人生でもっとも印象に残った経験として、あまりにも気に入って「口から離れない」ほどの盃に出会ったことを紹介。その盃の作家は八木一夫でした。

宇田川氏は「お茶人はお気に入りの器には箱をつけたり、名前をつけたりする。ものに対する愛情が深い」とコメントしました。

質問より

第次に、事前に用意した5つの質問を軸に話は進みました。1つ目は「ものの価値はどのようにつけられるのか」についてです。大島氏は「最終的には持っている人が決めるのでは」と答え、田中氏は「主観的な価値と客観的な価値がある」という事例を紹介しました。
2つ目の質問は「お茶でいう『見立て』とは何か」。大島氏によると、そもそもお茶の道具は「見立てからはじまったのではないか」といいます。宇田川氏によると「お茶でもてなすとき自分の美意識をほめてほしいというのが根底にある。そのとき、お茶の道具をほかの道具で代用しているとお客がびっくりする。そこに見立ての面白さがある」と語りました。
3つ目の質問「いい道具だと思った瞬間」では、宇田川氏は「ひとめぼれが多い」、田中氏は「お茶の場合は1点ではなく『組み合わせ』という評価基準があるのが特徴かもしれない」と答えました。
4つ目は「金沢という土地の風土」について話されました。宇田川氏は「日常のなかに文化が根付いている」印象があると話され、大島氏からは金沢には「吸物八寸」という独特のお茶事の進め方があることが紹介されました。それは献立の前段の食事を略し、吸物から始まる献立だそうです。
5つ目に「昨今水着での茶会などがあるが『自由な茶会』についてはどのように思うか」という質問について、大島氏は「お茶は飲食をするので、清潔感と清楚さがきちんとあれば、否定するものではない」、田中氏は「形ではなく、それをやることの必然性や主張が大事」と答えました。

最後に島館長から、岡倉天心の著作に書かれていた「茶道の本質は、不完全ということの崇拝」という言葉についてどのように思われるか、という質問がされました。大島氏は「完成された10よりも8や9のほうが良い。それを喜ぶ文化が侘び寂びといった日本文化の考え方につながる」と話し、田中氏も「imperfect」という英語を引用して賛同し、宇田川氏は「人間も何でも完璧にこなせる人よりも、少しダメなところがあるほうが面白いのでは」と結びました。